0を1にするイノベーション!未来を創る意思のチカラ
~ユーグレナで世界を救う~
持続可能社会の実現に向け、共に「希望の事業化」を目指すアミタとユーグレナ社。前例のない社会変革にチャレンジし続けるポジティブマインドと事業ビジョンはどのように生まれたのか?
しまうまフレンド三組目は、ユーグレナで世界を救う、株式会社ユーグレナ代表取締役社長の出雲充さん。レッツ!しまうまトーク!
未来を救う男達
時は2023年。世界はSocial issuesの炎に包まれた。
そこに運命を切り開く一人の男がいる。それはアミターバの宿命。
男の名は、末次貴英。
見よ!今、持続不可能社会に終止符が打たれる。―――
末次:アミタタタタタタタタタタァー!!!利益至上主義、オワッタァーー!
ミドリ色の戦士:末次よ、私にお前の拳は効かない。なぜなら、私はユーグレナの化身。人と地球を健康にするため力を尽くす。未来のために戦っているのだ。
末次:ミドリ色の戦士!敵ではないのか!名はなんという。
ミドリ色の戦士:私の名は「イズモ」。
末次:イズモ、仲間にならないか?この持続不可能な社会を変えるため、私はずっとお前のような戦士を探していたのだ!
ミドリ色の戦士:末次よ、私はもうおまえの中にいる。おまえは栄養不足だといって、昨日「からだにユーグレナ」を飲んだであろう?
末次:え?からだにユーグレナ??あーっと、、、の、飲んだ!!
突如現実へ引き戻された末次、そこはベッドの中―――
末次:な、なんだ今の夢は!
ん?何この布?ミドリ色のネクタイ?俺こんなネクタイ持ってないけど、、、こ、これはイズモ?まさか実在するのか!?
ミドリ色の社長と語る、幸せの定義
末次:というわけで、ミドリ色のネクタイを頼りにイズモを探していたら、出雲さんにたどり着きまして。知れば知るほど、出雲さんやユーグレナの事業にシンパシーを感じて、会いに来てしまいました(笑)
出雲氏:このネクタイね、ネットで買えますよ(笑)
末次さんとは同世代だとお聞きしていて、今日は楽しみにしていました。
末次:私もです!
ユーグレナさんは微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)を活用した食品や化粧品の販売、バイオ燃料の研究などを行っているバイオテクノロジーのベンチャー企業ですよね。小学校の生物の授業で和名の方の「ミドリムシ」で習ったときに、虫じゃないよ、藻なんだよって習いましたけど、実は「ユーグレナ」っていう格好いい学名があるんですね。社名=学名そのもの、潔くて素敵です。
さて、早速ですが、御社は「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を会社のフィロソフィーとして掲げられていますが、出雲さん自身は持続可能性や幸せということをどう捉えていらっしゃるのか、お聴きしたいです。
出雲氏:おお、冒頭から壮大なテーマだ(笑)
「Sustainability First」は、2020年にユーグレナ社がありたい姿として制定しました。私たちはサステナビリティを「自分たちの幸せが、誰かの幸せと共存し続けること」と定義していて、みんながサステナブルになることを目指しています。当社の事業が成長すればするほど、社会のあらゆる問題が解決される企業であるということなんです。
末次:なんと、もう同じパッションしか感じません!
私は、幸せの定義は人それぞれだけど、不幸の定義は絞られるというか、「孤独」が最大の不幸だと思っています。実はアミタも、2011年に『自然資本と人間関係資本の増幅に資する事業のみを行う』と定款に定めまして。もう言い切っちゃってるんですよ、発展すればするほど、人と自然の関係性が豊かになる社会を創るって。すごく似ていませんか?私たち。
出雲氏:それは素晴らしい!すごい、本当に似ていますよね。
個人的な幸せの定義でいうと、私が師匠として仰いでいる、グラミン銀行創設者であり2006年ノーベル平和賞受賞者であるムハマド・ユヌス先生が教えてくれた言葉がありまして。
"Making money is just happiness, but making other people happy is super happiness"
(お金を稼ぐことはただの幸せだ、でも自分以外の人を幸せにすることはスーパーハピネスだ)
ユヌス先生は、スーパーハピネスという言葉をよく使われるんです。日本語ではしっくりいく言葉がないんですけど(笑)
ソーシャルビジネスの本質は、ポツンと孤独な人を社会にインクルード(含む)して、みんなと関与できるようにする、みんなの力でみんなが幸せになっていくことだと思います。自分の働きかけで、孤独だった人がハッピーになっていくのを見たら、もう信じられないぐらい力が湧いてくる。私も末次さんも、そういう体験があって、他の人のために貢献するということがスーパーハピネスだと知っている。そしてそれを大事にしている同じような人間が、今アミタとユーグレナ社に溢れかえってるんじゃないかなと思いますね。
末次:たしかに、ワサワサいますね、そういう人間が(笑)
インクルードしていく、といえば、アミタの「MEGURU STATION®」がまさにそういうコンセプトでやっています。ここは家庭ごみを資源として持ってきてもらって、分別回収する場所なんです。でもそれだけじゃなくて、リユース市やお子さんの遊び場、団らんの場所なんかが併設されていて、集まる人たちの関係性が自然と増幅していくコミュニティ空間になっています。ここへ来ると誰かがいて、資源分別を通じて自然と会話が生まれる。昔のような大きな家族みたいなコミュニティを作って、孤独を無くしていく。これを全国につくることが、アミタの一つの目標です。ズバリ、2030年に5万か所!時間軸が長いうえに、かなりの野望ですけど。
出雲氏:へぇ~!それ最高じゃないですか!
私はロングタームの思考が大事だと思っています。例えば、ショートターム思考の人とは、あんまり幸せの定義とか持続可能性について話しましょう、とはならないでしょ。今末次さんとお話しているようなトピックや夢は絶対に出てこない。明日いくら儲かりますか、みたいな話ばかりで。私はロングタームで考える人、クローズド(閉鎖的)からオープン(開放的)にするマインドの人、価値観を共有できる人と一緒に、新しいこと、持続可能な社会をつくることにチャレンジしていきたいなと思っています。まさに末次さんですね!ショートタームでクローズドな社会は、効率ばかりを追っかけちゃいますから、それでは持続性は期待できないですよね。
末次:あ、私いま、遠回しに告白されましたね(笑)一緒にチャレンジ、はい!よろこんで!
ミドリ色の社長の経営観
末次:出雲さんは、18歳の時にバングラデシュへ渡航したことがきっかけで、ユーグレナ社を起業した、というのをご著書で拝読しました。それからここまで、苦しい時もたくさんあったと思うんですが、どんな風にご自身や会社の将来を見てこられましたか?ユーグレナの時代がいつか必ず来ると確信していたとか、自信はないが自分にはこれしかない!と思ってやってきたとか。
出雲氏:今も昔もそんなに変わらないんですが、、、
私、知らなかったんですよ、起業がこんなにしんどいことだって!これまで誰も成功しなかった微細藻類ユーグレナの食用屋外大量培養を世界で初めて成功させたら、もう毎日毎日「ユーグレナ最高!」とか「こんなに栄養ある素敵なものをよくぞ作ってくれた!」とか「もう大好き!」って言いながら、みんなが列をなして買いに来るって、絶対そうなるって、本当に本気で思っていたんです。
そうならないかもっていうのを想像できないほど、世の中の事を知らなかったんです。起業がこんなにも大変であまりにも恐ろしいものだってもし先に知っていたら、絶対起業してないですよ(笑)だってもう、やってみてびっくり!びっくり仰天ですよ!社会がこんなに起業とかベンチャーとかイノベーションに冷たいとは思いませんでした(笑)
末次:マジですか(笑)笑っちゃいけないけど笑っちゃった。
経営者って、やりたい事とやらないといけない事が同時にくるじゃないですか。出雲さんが経営の判断とか決断をする時に、ご自身の中で背骨にしている事ってなんですか?価値判断基準というか。
捉え方によっては、これもこれもありだけど、その2つは対立してるって時ありますよね。例えば、燃料的にはOKだけど、食品としてはどうなの、みたいな事とかあると思うんですよ。そういう時、どうやって判断されるんですか。
出雲氏:想像力がないのが僕の売りなので(笑)あんまり余計なことは考えない。判断軸みたいなものはほんとに無いんですよ。
僕のところまで上がってくる案件って、僕より頭がいい人、賢い人たちがもうちぎれるほど色々考えて、それでも判断がつかなかったものだけなんです。みんなを不安がらせてはいけないので、さすがに目の前でサイコロ振ったりはしないですけど(笑)でもやってることはほぼそれですよ。そこで、ちょっと考える時間ちょうだいとかこれ追加で調べてきてとか、それを言ったらおしまいなんです。絶対ダメなんです。そうじゃなくて、もう今その場で、どっちでもいいから頭の中でサイコロ振って、とにかく自信満々に、必ずこっちが正しいから堂々とやりなさい、って言うんです。
それでやってうまくいったら、もう悩んでいたことなんて誰も覚えていないでしょ。で、もし「言われた通りやってみたけどうまくいきません、どうしたらいいですか」と言ってきたら、やってうまくいかないなら間違えてるに決まってるんだから何も悩むことない、今すぐ止めなさいよって言うんです(笑)
末次:素晴らしい(笑)
そういえば、この前お会いした気候学の先生が「ビジネスのことはよく分からないけど、これからやってはいけないことが2つある」とおっしゃったんです。それが「選択と集中、想定と対策」なんですよ。これって、これまでのビジネスの正攻法、バイブルですよね。優先順位を決めて無駄をなくす効率性重視とか、事前に想定して対策案を考えておくとか。でも、短期的にはそれでいいように見えても、長期的にこれをやり続けてると、どんどん可能性や自由度や多様性が失われていく、というような文脈でした。うちの会社でも、選択と集中ができてないとか事前想定が甘いとかいう言葉が会議でよく出ますけど、哲学や意思がない状態で、今の価値観だけに頼って、それやってればいい、それ言っとけばいい、みたいになると完全に思考停止ですよね。
"仲間"とチャレンジする!
出雲氏:私は会社をつくってから、あまり何も考えていないんですけど(笑)
でも今の話の流れで、私、絶対使わない言葉が2つあって。それが、「効率」と「社員」なんですね。
2005年に創業してから今日まで、そしてこれからもずっと「新入社員」「中途社員」と呼んだり、効率をもっと追求しなさいということは、24時間365日絶対言わない、と決めているんです。ユーグレナ社には「新入仲間」「中途仲間」、仲間しかいないんです。日本には367万も会社があるのに、ユーグレナ社に来てくれるという事は、367万分の1なんです。こんなの宝くじよりも珍しいわけで。社員じゃなくて大切な仲間、だからうちでは「社員」なんていないんです。
末次:パッション、キタ――――!
ユーグレナさんの「仲間」に似ていますけど、アミタでは「入社」という言葉を使わないんですよ。
出雲氏:ええ??なんていうんですか!?
末次:「合流」です。細い川が合流していってやがて大河となるように、同じ志を持った仲間と合流して、一人では実現できない大きな夢を叶えるという思いです。だからうちでは入社○年目というのは合流〇年目ですって言います。
出雲氏:うわぁぁぁぁぁぁぁ!!最高!! そのアイデアいただき!!
ちょっと!広報!今日から全部変えて!「合流」に変えて!これ天才ですね!
末次:今日いちのテンションいただきました!(笑)調子に乗って紹介すると、アミタの社章は"カラーズ"というんですけど、人の顔になっているんです。異なるカラー、多様な個性が集まって、ひとつの大きな個性をつくろう、そして同じ希望を目指していこう、という。
出雲氏:見せてください、カラーズ。あ、ほんとだ!これも、いい!!
うちは、仲間にはとにかくチャレンジ、Just do it now(とにかく今やる)をして欲しいと思っていて、会社をつくってから18年目に入りましたが、まずはやってみようと言い続けて、体現し続けています。それでなんとかユーグレナ社の仲間たちを短期思考から長期思考に、クローズド(閉鎖的)からオープン(開放的)にして、絶対に解決不可能といわれるような問題にタックルしています。
末次:超行動主義ですね!言うは易しですが、18年行動し続けてるのはホントすごいです。
出雲氏:行動しすぎて、ユーグレナ代表って言ってる変な人、と思われていますけどね(笑)
末次:ユーグレナ代表って、もはや人間じゃないですもんね(笑)
アミタも、仲間の募集には「本気で挑戦する"未来開拓者"を募集します。」と言っていたり、あとMVF(Most Valuable Failure)という賞があったり。
出雲氏:なんですか!その面白そうな名前の賞は!
末次:失敗を恐れず挑戦をして、案の定失敗して、でもそこから未来の価値創出につながる学びの資産を獲得したことを讃える賞なんです。いい失敗した!もっと失敗していいからどんどんチャレンジしていきなさい、という賞です。
出雲氏:最高ですね!!ちょっとぉ~!広報!メモしてメモぉ~!
ユーグレナ社が実現したい2つのこと
末次:最後にもう一つ。私、出雲さんはもっとやりたいことがあるんじゃないかと思っているんです。ぜひ出雲さんの野望をお聞かせください!
出雲氏:私のやりたい事は2つだけです。
- バングラデシュと、バングラデシュにある難民キャンプの100万人の栄養問題をゼロにして、世界中のみんなに真似したいと思わせる
- エネルギー資源の無い日本で国産のバイオ燃料をみんなが使えるようにして、それを世界中に広げエネルギー問題を解決する
この2つが実現できたら、あとはなにもしたいことはないですね。
末次:すごい!明確に2つなんですね。
出雲氏:なぜ食料問題、栄養問題、貧困問題が解決できないかというと、世界で最も困難な場所で小さい成功事例を作るベンチャーが不足しているからなんです。0を1にするのがベンチャー企業の仕事で、1を100にするのが大企業と政府の仕事。これからのベンチャー、スタートアップの存在意義は"Make a small early success in the hardest field(世界で最も困難で無理だと思われている場所で最初に小さい成功事例を作る)"だと思うんです。
0を1にする。これが私のやりたいことであり、ベンチャー企業が社会に存在する根源的価値だと思っています。
バングラデシュは現在では成長速度がめまぐるしい国の1つになっていますが、元々世界最貧国の1つで、いまだに貧困が強く残る国です。そこに着の身着のままで隣国ミャンマーから逃げてきた難民の人は誰がどう考えたって困っている人なんです。この難民問題は、国連もバングラデシュ政府も困難すぎて諦めている。だからこそ、私たちが、毎日栄養がたっぷり入ったユーグレナクッキーを配り、1年後、難民キャンプ内の栄養失調が0になりました、という実績をつくったら世界中の人がびっくりすると思うんです。あの貧困国のバングラデシュの難民キャンプで0になるんだったら、じゃあうちも、アフリカも南米も中東も出来るに決まっている!という話になって、みんなが調べにくるんですよ。
そこから国連やグローバル企業がこのプロジェクトを広げていく、1を100にしていって世界中の人が健康になる。これが1つ目のやりたい事。
2つ目は、ユーグレナ社の国産バイオ燃料「サステオ」を普及させる事。
末次:ユーグレナさんのバイオ燃料、実現したらものすごいことになりますね。ほんとに未来の燃料になる。
出雲氏:世界地図のどこに日本があるのか知っている人は、世界にはすごく少ないじゃないですか。でも、日本の場所を知らない人でも、なぜか、日本は化石燃料が採れない国だということは知っています。その日本で、国内線の飛行機が国産のバイオジェット燃料で、カーボンニュートラルを実現しながらバンバン飛んでいます、となったら、どうなると思いますか?
末次:うちの国でも真似したい!となりますね。
出雲氏:バイオ燃料でカーボンニュートラルの実現を日本が達成しましたって言ったら、資源国でも「日本のバイオ燃料使いたい!カーボンニュートラル実現したい!」ってなりますよね。それが広まると、もう地球規模で温暖化・気候変動も解決していく。
これも、世界で最も困難な場所で、みんながびっくりするような、真似したくなるような小さい成功事例、0を1にすることです。
末次:実は、アミタにもやりたいこと、いやもうやるって発表しちゃった事があるんです。
出雲氏:おぉ!それはなんですか?
末次:去年、2022年の11月に「エコシステム社会構想2030」というのを発表したんです。
先ほど少しお話したMEGURU STATION®を2030年までに全国に5万か所設置して、良質な資源が集まるコミュニティのネットワークを作る。互助共助の関係性が生まれる場所なので、孤独や介護問題といった社会問題も解決される。さらに、MEGURU STATION®で集めた資源をMEGURU FACTORYというソーティングセンターで細かく選別して、原料となる価値の高いサーキュラーマテリアルに加工して、そこからまた新たな商品を作る。こうして、資源が無駄なくぐるぐる循環する、自然の生態系のような持続可能なエコシステム社会を創るというものなんです。言葉では分かりにくいと思うんですけど、動画があるので是非見てください(笑)
5万か所ですからね、今まだ10か所ないですからね。まさに、できるかどうかまともに考えてたら、こんな宣言できないです。やるべきだしやりたいから、やる!っていう(笑)
出雲氏:最高じゃないですか!やっぱり、アミタさんとは見ている未来が同じだ。これからはもうアミタユーグレナ時代ですね。
2030年の日本、エコシステム社会でユーグレナ社のバイオ燃料「サステオ」を使って飛行機バンバン飛ばしちゃいましょう!循環しよーーーー!!
末次:すごい掛け声きた!循環しよーーーー!!おーーー!!!
にしても、イズモがこんなテンション高い戦士だとは思わなかったなぁ(笑)
対談者 | 出雲 充氏(株式会社ユーグレナ代表取締役社長)
駒場東邦中・高等学校、東京大学農学部卒業後、2002年東京三菱銀行入行。
2005年株式会社ユーグレナを創業、代表取締役社長就任。世界初の微細藻ユーグレナ(和名:ミドリムシ)食用屋外大量培養に成功。
世界経済フォーラム(ダボス会議)ヤンググローバルリーダー、第1回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」、第5回ジャパンSDGsアワード「SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞」受賞。
著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。』(小学館新書、2017年)、『サステナブルビジネス 「持続可能性」で判断し、行動する会社へ』(PHP研究所、2021年)
経団連審議員会副議長、内閣官房知的財産戦略本部員、経産省SDGs経営/ESG投資研究会委員、ビル&メリンダ・ゲイツ財団SDGs Goalkeeper